■事務局■ この一月に「農薬取り締まり法」が改正され、これまでの「登録農薬」に加えて「特定農薬」が指定されました。実はこの問題に関して、私達事務局は有機農業を進めるという立場と農水の認定機関という立場でジレンマなんです。辛いですよ。
◎消費者● ヘー。一体どういう法律なんですか?
■事務局■ 昨年夏、無登録農薬ダイホルタンが全国的に使われていたことが報道されましたね。この時「無登録農薬は売った人ばかりでなく、使った人も罰すべきでは?」という消費者の声を反映して法制化されたようです。
◎消費者● それで、罰する前提として、何が登録農薬で、何が無登録なのかはっきりさせたということですね。
▲生産者▼ そうです。何故かあの可愛いアイガモも候補に上がっていましたが、結局「食酢」「重曹」「圃場周辺の天敵」の三つが「特定農薬」に指定され、木酢、牛乳、にんにく、唐辛子、インドセンダン、レモングラス、アルカリイオン水などが判定保留になっています。
◎消費者◎ でも・・私達が問題としているのは農薬のことですよ。酢や重曹という食品がなぜ農薬になってしまったのでしょう?
▲生産者▼ そうなんです。有機農家にとっても酢や重曹は農薬を使わない為に発見工夫してきた「無農薬の為の資材」なんです。有機農業の歴史的努力のたまものですよ。こういう無農薬の資材を、虫に効くからという理由で「特定農薬」に指定するというのですから有機農家は混乱しますよ。
◎消費者● いらぬお世話のような気がしますけれど。民間農法もいちいち農水にお伺いをたてないといけないのですか?もっと他にやることがあるでしょうに。例えば園芸用や原野にまく除草剤などは農業以外なので規制の対象外なんでしょう。そちらの方が環境や人体に与える影響は大きいはずですよね。
■事務局■ ところで、この法律の農業への影響はどうですか?
▲生産者▼ 良い点もありますよ。今回の農薬法の改正には罰則がありますから、農薬の使用にお百姓さんは敏感になるでしょうから。
■事務局★ でも一方で登録農薬を使いやすくするために、農薬の適用範囲が広くなってしまいましたね。罰則を決めるかわりに、使いやすくしたという感じなんでしょう。
▲生産者▼ 私達有機農家に関係するのは「特定農薬」の部分です。例えば酢を使って防虫をやっている観光イチゴ農園は「特定農薬使用」ですから「無農薬」の看板をおろすかどうか微妙ですよ。それに、有機農家は「牛乳、小麦粉で殺虫しました」と言ってはいけないんです。これらは農薬ではないので虫を殺すために使ってはいけないそうで。
◎消費者● エー、なんか冗談みたい!有機認証を申請する時「牛乳を殺虫に使った」と書いたら違反なんですか。
■事務局■ そうです。熊本県有機農業研究会はもともと有機農業を進める為の団体です。だから無農薬のための技術はドンドン広めたいと思っています。でも農水の有機認定機関でもありますから、認定基準は守らないといけません。はじめに言ったジレンマとはこのことなんです。
■事務局★ 認定書類の膨大さもそうですよね。有機農業にとって、一枚の畑に多様な作物を作り、多様な生態系を維持する事は基本です。でも、そういう基本に忠実な作り方の人ほど、認証の為の書類は煩雑で膨大になりますから。心苦しいです。
◎消費者● そうなんですか事務局がそんな苦労を抱えているなんて知りませんでした。でもそれは事務局だけが抱え込む問題ではないですよ。会員一人ひとりが有機農業を進める為に悩みも共有するところから始めましょう!

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