熊本県有機農業研究会の源流を訪ねて(4)

前回の座談会に引き続き後半部分


―家族や地域の理解―
高丸:かならず夫婦で研修会などに出かけました。三重県の愛農学園、長野県、ヨーロッパなど一緒に行くなど、妻との共通理解があります。
本田:最初は地域の人たちの理解はむづかしかった。しかし、ダニ防除剤を使えばかえってダニが増えることを知り、理解が生まれてきました。また、父親がよく理解してくれました。
森田良光(小川町):妻の理解は大きかった。しかし、周りでは「大きい農家が草をはやして、つぶれるのではないか」と冷ややかな目がありました。八人で「小川ゆうき村」をつくったころから、周りの理解ができてきました。

―個人にとって有機農業とは
 高丸:健康に生きる、安全なものを作り出す喜び、生きがいにつながります。私にとって有機農業は「遊び道具」であると思います。
 佐藤るい子:自分の生き方の一つ。自分に対しても、他人に対しても正直であることが大切です。有機農業で知り合った仲間が支え合うことは「宝物」です。
 村山:有機農業をやってきて人生が楽しかった。生協との提携は収入の安定につながった。また、ほんとの仲間ができました。
吉見:食べていただく人がいての農業です。有機農業は顔が見える関係、家族と同じ、いかに信頼が大切であるか自覚しています。
 森田加代子(小川町):障害者をサポートして、いのちと食べ物、環境、そして農業がいかに大切であるか実感していました。有機農業はライフワークです。共感し合える仲間が多くいます。
(以下、紙面の都合により省略)

***源流に学び、未来へ***
 四回にわたり「熊有研」の源流に迫ってみましたが、奥が深く、その入り口に辿り着くことができたのでしょうか。整理すると次のように考えます。
 *医師グループから:農薬漬けの農業が病気を引き起こしていることなど、予防医学の視点
 *農民から:化学肥料と農薬多投による地力低下や農薬中毒問題を改善する農法、また所得の安定の視点
 *消費者から:健康によい農産物の確保、そして環境問題や教育の視点
 *農協や生協などから:人間の健康と自然環境を守る協同組合運動の視点
 *宗教界から:愛農会などいのちを尊重する生き方の視点
要約すると、共通点は
 @目的:いのちとくらしを守り、豊かにする
 A方法:お互いが信頼し、支え合う「提携」
 B価値観:いのち優先があります。
つまり、「いのちとくらしを大切にした世直し」の思想」と「実践」とが源流にあり、経済的、精神的に苦労の中で、これまで続いてきた原動力なったと思われます。この思想と実践に学び、未来に受け渡していく必要があると考えます。

(内田敬介)

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