少量多品目栽培 加工の達人

薬の変なにおいが子供の頃から嫌いで、菊池養生園の竹熊先生や当時矢部農協の佐藤組合長と出会い、意識が変わっていったと言われる。当初は本人が有機農業、ご主人は会社勤めだったので金銭的な問題はなくできたそうだ。
80歳を迎える歳になられたが、まだまだ元気で、今後は後継者の育成をし、40年間無化学肥料、無農薬で維持してきた自分の農地を引継いでもらいたいという想いが強いようだった。加工品作りと併せて、週に1回勉強に来ている人は4人くらいいるが、実際に継いでくれるような人はなかなかいないとのことだった。
作物栽培技術については、お金のかからない有機農業をモットーに、雑草、落ち葉の利用、天恵緑汁など昔ながらの農法を今でも実践されている、数少ない有機農家である。また、自給自足のライフスタイルや生産物のおすそ分け的な、自分が口にしている美味しく、安全・安心な作物や加工品を消費者へ届けるという有機農業の原点であるスタイルを貫いてこられたという点も特筆すべきである。

<栽培品目>
栽培面積:水田60a 畑20a
タマネギ、オクラ、アカシソ、ゴマ、キュウリ、ニンジン、ダイコン、モチキビ、トマト、すいか、トウガン、ズッキーニ、ラッキョウ、ニンニク、ニラ、アズキ、ダイズ、ウズラマメ、ミョウガ、米(ヒノヒカリ、緑米)、カグラモチゴメ)、など少量多品目
加工にするものをメインに栽培する。青果で出荷できる期間や品質の良いものは青果で出荷し、その他は加工品にする。
多めに入れないと玉太りしないため、タマネギには多めに施肥する。

<ほ場環境>
土質:白真土
標高:470~480m中山間地
白真土はどんな野菜でもよくでき、味が良いが、土が硬いので根がきれいに入っていかず大根は肌が少し悪くなることがある。土質にあった作物を植えることが大事。

<種>
購入する種はハクサイ、タマネギくらいで、あとはほとんど自家採種する。
自家採種のポイント:雨が多い時期の種採りになる作物は雨よけなどしたほうが良い。ほうれん草は種採り時期はすぐ倒れるので、毎日畑に行って種採りのタイミングを逃さないようにすることが大事。
・自家採取し続けて、固定種になった作物
五木赤大根:赤くて色味がきれい。漬物、切干大根などどんな料理でも使える。
ゴマ:金ゴマと黒ゴマが混ざってしまったがそのまま栽培している。
落花生:黒ピーナッツと白ピーナッツを栽培している。生でも美味しいと言われる。
赤ジソ:生まれた時からあった種を今も栽培し続けている。赤色が梅干などによく付く。

<肥料>
堆肥:発酵鶏糞を田んぼに入れる場合は、水稲、タマネギの元肥として、稲株が少し見えるくらい多めに投入。前作の出来具合で量を決める。施肥するのはこの1回のみ。

購入資材:有機購入肥料(パワーオルガ6-8-4)、カキガラ石灰(サンライム)、菜種油かす
購入資材は補助的にしか使わない。
水田の水口に刈った雑草を積んでおいてその雑草から出た黒い汁を田んぼに入れ、その後代かきする。
草木の新芽を摘んで田んぼに入れると、新芽から酵素(黒い汁)が出るのでよい稲が育つ。
刈草、落ち葉、ワラなど天然のものを使い、できるだけお金を使わず、昔からの技術を活かした有機農業がモットー。

<雑草対策>
畦畔の草を畑に鋤込んで地力を上げている。草が枯れてから畑に入れることが大事。
水田はジャンボタニシと米ぬか、竹粉を活用する。米ぬか、竹粉は水田に散布すると、水面に浮かんで水中に日が当たらなくなるので雑草の芽がでにくくなる効果がある。
田植え後、2~3日田んぼを干して草を生やしてからジャンボタニシを入れると稲を食べずに草を食べてくれる。
畑は手取りが主。

<病害虫対策>
害虫は手とり。
獣害対策としてほんどの圃場は電柵をしている。。

<加工品>
・漬物
A:夏場の余剰野菜を辛めに塩漬けする→B:11月頃玄米を発酵させて麹を作る→AをBに漬け塩抜きする(1年間)→無農薬の酒粕に漬ける(1年間)→完成
・赤梅干し
大、中、小に大きさを選り分ける→梅の重さに対して大20%、中17~18%、小15%の塩を入れ3週間漬ける→天日干しする(2日3晩)→揉んだ赤ジソを入れ漬ける
・紅しょうが、チョロギ漬け、菊芋漬け
梅干しの汁にそれぞれの材料を漬ける。紅しょうがは2~3ヶ月くらい。チョロギと菊芋はわりとすぐ漬かる。いずれも色合いを見て汁から揚げる。
・らっきょう漬け
葉が1/3くらい枯れた時にらっきょうを収穫する→酢、砂糖、塩を混ぜたものを沸騰寸前まで加熱する→冷まして、唐辛子を入れらっきょうを漬ける
材料:らっきょう1.5kg、塩120g、砂糖300g、酢1ℓ、唐辛子2本
・みどり米のあんこ餅
みどり米を発芽ぎみくらいに2~3日水に漬ける→餅をつく→あんこを入れて丸める
・山菜おこわ
A:竹の子、ワラビ、しいたけ、ごぼう、むかご、ニンジンを味を付けて煮る→B:栗、ギンナンともち米を蒸す→AとBを混ぜて蒸す
・小麦まんじゅう
小麦を水車で粉にする(未精白ぎみ)→どぶろくとその小麦粉を混ぜて12時間おき、発酵させる→あんこを入れて丸める→蒸す
・こんにゃく
あく作り:大豆の殻をしっかり焼いて灰にする(焼炭をいれて真っ白になるまで十分に)→ふるって灰1升に湯3升をUの字を描くようにゆっくり入れ棒で混ぜる→上澄み液を採る→その液を濾紙で濾す→完成
こんにゃく芋を圧力鍋で煮る(シュシュいいだして弱火で40分)→皮をむく→あくと一緒にミキサーにかける→丸める→煮る

料理や加工品については分量など試行錯誤しながら作ってきた自分なりのレシピがある。今でも料理番組など見て自分なりに研究している。販売している加工品はとても評判が良く。すぐに売切れることが多い。