25年のキャリア、アイガモ稲作

アイガモ稲作を主軸とし、根菜類、葉菜類など少量多品目で野菜も生産されている有機農家である。アイガモ稲作は25年のキャリアがあり、導入された当時から自ら実践しながら技術を確立されていったことは大変苦労があったと考える。くまもと有機の会の取締役をされていることもあり、今もなお土壌分析や太陽熱処理など技術力の向上を目指しておられる。聞き取りの中で、作業の記録や管理が徹底されていると感じたが、「有機農業は楽しんでやることが何よりも大事」だと語られたことが印象深かった。

有機農業をはじめたきっかけ

父の代ではトマト、ピーマンを慣行農法で作っていた。農薬がかかって皮膚がかぶれたりしていたこともあり、当時から農薬は使いたくないと思っていた時、飯星幹治さんに「くまもと有機の会」を紹介され、里芋や人参、大根など農薬を使わなくても栽培し易いものから作り始めて出荷した。有機栽培の技術を身につけていくうちに、きゅうり、ナス、ほうれん草と徐々に品目が増えていった。アイガモ農法は最初コイやカニなどいろいろ試していたが、所属していた御岳有機農業研究会で福岡の古野隆雄氏のアイガモ農法を視察に行き、研究会のメンバーで「これならいける!」とみんなで始めた。それから25年間アイガモ農法に取り組んでいる。

◆年間生産計画

水稲(ヒノヒカリ)120a  レタス80a、里芋70a、人参40a、きゅうり10a、こどもピーマン5a、ナス5a、ホウレンソウ5a、大根30a、リーフレタス20a

<ほ場環境>
標高:400~450m、土質:火山灰土、赤土、白真土など畑によって違う。

<土づくり>
堆肥は鶏糞を使用。水田には近年入れていないが、畑は700~800kg/10a使用する。

<施肥>
水稲:こころ味まる4号 100kg/10a
里芋:鶏糞1t/10a、パワーオルガ(6-84)またはバランス(6-8-4)60~80kg/10a
ホウレンソウ:パワーオルガまたはバランス80~100kg/10a、サンライム100~120kg/10a
レタス:鶏糞1t/10a、パワーオルガまたはバランス100kg/10a
今年土壌分析したらリン酸が多かったので、来年からはリン酸の少ない肥料を入れる予定

<種>
水稲(ヒノヒカリ): JAから購入。以前は自家採種していたが、作柄があまり良くなかった。
里芋:自家採種 種子量100kg/10a 収量を上げるためにたまに御岳会のメンバーと種の交換をする。種の保存:畑に芋種を高さ1m幅1.5mの山にして種が見えない程度に茅を被せ、土を20cmくらい被せている。芽出しは3月に耕うんした畑に種芋を並べて薄く土を被せ、透明ビニールで被覆する。植えつける時は、芋が深く付くように芽をできるだけ下にするようにしている。

<苗>
自家育苗:水稲、レタス、リーフレタス、きゅうり
用土:水稲は赤土と薫炭。水田の育苗床にパワーオルガを入れる。
レタスはそよう有機のレタス育苗用土 2月、3月以外はハウス以外の納屋などの涼しいところで芽出ししてからハウス内で育苗するようにしている。
購入苗:きゅうりはたまに購入、ナス 近くの農家から購入している。

<雑草対策>
水田:アイガモ除草。投入羽数:6羽/10a(草が少なくなってきたので羽数は減ってきた。以前は10羽/10aくらい入れていた。 投入時期は田植え2週間後、引き上げ時期は穂が出る前。 今年は6月7~8日田植え、6月25日鴨投入、8月22日鴨引き上げ。
米ぬかペレット:75kg/10aを田植え直後に散布。あまり効果はわからない。
狭い水田はエンジン式除草機で除草する。
里芋:黒マルチ、通路マルチ、芽かぎと同時に植え穴からの草を取る。
レタス:黒マルチ、通路マルチ(前作のマルチを2つ折りして使用)
夏播き人参:太陽熱処理
施肥→耕うん→管理機で幅135cmの透明マルチを被覆し畝作り→毎日13時に土の中の温度を測る→積算600℃になったらマルチを剥ぐ→種播き
水田、畑の畦畔の草刈り:イノシシ防除用の電柵の下や畦畔の草刈りを年5回ほど行う。

<病害虫対策>
害虫:葉物は防虫ネット、その他は何もしない。水稲に付く害虫はアイガモが食べてくれる。
病害:何もしない。
鳥獣害:カラスはテグス、網で防除する。イノシシは電柵で防除する。集落で5基の箱罠を購入して駆除している。

<流通・販売>
米:くまもと有機の会、JA
野菜:くまもと有機の会、グリーンコープ(御岳会で出荷)、有機の里(熊本市小山町)
販路開拓はしていない。出荷依頼に対して農産物が足りない時がある。
こだわっていること:有機農産物で安全だから売れるわけではない。見た目、味が良くなるように意識して栽培している。人参、里芋は特に味がいいと言われる。里芋は出水のある水田に植えるので、水が美味しくさせている。その他の農作物は寒暖の差が美味しくさせているのだと思う。