素晴らしい環境を生かし安全性と味にこだわる

伴さんの自宅そして圃場は、山都町矢部地区でもかなり標高の高いところにあり、訪れた9月にも空気はひんやりとしていた。清らかな空気と水のおかげで作物は元気に育ち、味もよくなる。いただいたトマトは、コクがあってとてもおいしかった。
また、冷涼な環境は虫や病気の発生が少なく、有機農業をするうえで、大きなアドバンテージである。
その環境を最大限に利用し、水稲については有機栽培、トマトについては減農薬栽培を実践している。病害虫への対抗策は植物自身に抵抗力をつけることと考え、堆肥による土づくり、有機肥料の施肥、葉面散布によるミネラル分の補給などに力をいれている。

有機農業をはじめたきっかけ

学校を卒業後、親の跡を継いで水稲、野菜を慣行農法で作っていたが、水稲に粉剤の農薬を散布していて、これは薬ではなく毒だと思うようになり、15年ぐらい前から、水稲については無農薬、トマトについても減農薬の取り組みを始めた。収量は減ったが、安心して食べられ、売ることができるようになった。

<栽培品目>
◆年間生産計画

水稲・・有機栽培(無農薬、無化学肥料)ヒノヒカリ
トマト・・減農薬栽培(フルーツトマト、トマト、トマトベリー)

<ほ場環境>
圃場の場所は、阿蘇の外輪山の裾野に位置し、土質は、赤土系の粘土土質と、火山灰質の黒ボク土。
標高は600mから700mの高冷地に近い中山間地で、南向きの斜面なので、日照時間も比較的長い(10時間)。

<土づくり>
堆肥は、乾燥鶏糞、近くの畜産農家から牛糞堆肥を購入している。また、水田では、稲わらを全量すきこんでいる。

<施肥>
水稲では、「ニューパーフェクト有機」を使用。元肥のみ。
トマトでは、元肥は有機100%の「バッチリ753」「カルシウム88」「バイオマグ44」を使用。
追肥は有機70%の「エーノウドリップ6号、8号」「スパークSP」を使用。

<苗>
水稲の育苗は、山土と、「ニューパーフェクト有機」を使用。トマトは、接木したセル苗を購入し、ポットに鉢上げして使用している。

<雑草対策>
水稲の除草は、アイガモを使用している。ただ、今年は、キツネに獲られて全滅した。
トマト栽培で忙しいため手取り除草などは行っていない。来年はジャンボタニシによる除草を検討するつもりである。

<病害虫対策>
トマトでは、無農薬にも挑戦してみたが、ウイルスを媒介するコナジラミを防ぐのが難しく、最低限の農薬を使用している。それでも、シーズンで3回程度の散布のみしか行わない。(慣行農家は、週に1度ぐらい散布する)
その代りに、液状肥料を葉面散布し、ミネラル分などを葉から吸収させ、作物を強くしている。以前は、木酢液を使用していたが、いまは、下記の資材を使用している。
液状複合肥料「レイリ2000」「ソフトガード」。また、ヨトウムシの対策として、防虫ネットを使用し、粘着テープも使用している。

<流通・販売>
米はJAに一部出荷しているが、ほとんどが自家消費と、直接販売。トマトは、県内が70%、北九州20%、東京10%。デパートやスーパーなどを中心に新鮮さとおいしさをアピールして販売している。また、顔写真と山都町産の文字の入ったシールを貼った販売も行っている。
米、トマトとも完売しているため、現在は販路開拓は行っていない。