阿蘇に移住、酒米契約栽培の団地化を牽引

高島さんは、子供の頃から物作りが好きで、自分がやりたいと思ったことはすぐに実行する人である。阿蘇の自然と農業を素直に楽しみ、毎日を励んでおられる。栽培した農産物は「食べて頂く方の健康と命を支える」という強い想いと誇りが、届けられる消費者からの高い評価に繋がっていると感じられた。
おそらく、この村へ農業者として外部から移住してきた最初の人だろうと思われるが、村の共同機械利用組合や温湯消毒、自家採種グループなどの世話役も積極的に引き受け、地域にも良くなじむ明るい人である。
高島さんの農法が地域の中にも認められ始め、中心となって作られた酒造業者との酒米契約栽培も現在16名が参加し、4haの団地化がなされている。

<栽培品目>
栽培作物は、水稲9品種、麦2品種、大豆7品種、雑穀7種類、茶2品種など、多種類を栽培されている。水田は水稲72aの単作で、寒さもあって裏作はされていない。麦と大豆および雑穀をあわせて8a、茶25aを栽培されている。米は、飯米用の他、酒米や雑穀ブレンドにして販売する。
お茶は、1番茶のみを利用して煎茶、少し伸た茶葉で紅茶とウーロン茶を作り、以降は切り落として土に戻す。無肥料栽培のため茎葉は出来るだけお茶の木に返すのが原則である。特徴的なものとしては、12月~1月の切り落としの大きいところだけを使った「お狩り場茶」を阿蘇にちなんだ特産として作っている。
麦・大豆は、主に味噌用として栽培。水俣の加工場に委託し、材料は全て自分で栽培したもの12種類に、天草の塩のみを加えて作り、「わいわい味噌」という名前で販売されている。

<ほ場環境>
高島さんの地区は、阿蘇カルデラの南部、阿蘇五岳と外輪山に囲まれた南郷谷の西部、白川の北側に位置し、南阿蘇鉄道の長陽駅を有する中山間地で、ほ場の土質は火山灰質の黒土である。

<土づくり>
土作りについては、何も施さないのが基本である。以前は、収穫後の稲ワラを長いまま散布し土着菌を利用したボカシを使っていたが、最近は、稲ワラは収穫時に短く切って散布するのでボカシも入れていない。つまり、ほ場に生える雑草とそこで獲れる稲ワラのみが投入資材である。
作物に必要な養分は、用水から入るし、よく観察しているとほ場に生息する幾多の生き物からも供給されるので収量的には変わらないし、良く出来るものだと言われる。
冬場の荒起こしはしない。3月~4月頃に稲株が返るか返らない程度に浅く荒起こしを行う。作物にとっては、生の稲ワラ等が土中に入ることによって発生するガスが一番悪いのだと考えて、それを抜くためにも除草作業などでほ場内を歩き回ったりするそうだとのこと。

<種>
水稲、大豆、雑穀など、自分で栽培しているものは全て自家採種している。最近、仲間4人で「阿蘇タネ採りクラブ」を立ち上げて、阿蘇の固定種づくりを始められた。。

<苗>
苗は、全て自家育苗をしている。
水稲の場合、は寒いのでコシヒカリ系の早期品種と普通期のものと晩生期の2~3回に分けて播種している。
早 期(コシヒカリ)・・・・・・4月20日
普通期(ヒノヒカリ等)・・・・4月下旬
晩生期(山田錦)・・・・・・・・・・5月上旬
種子は採種・乾燥後に唐箕(とうみ)選をしているので、温湯消毒のみを行う。
床土は、赤土に自家製のくん炭を少し混ぜて使用。育苗箱に籾種を1枚に77粒くらいで条蒔きしたものを苗代田にベタ置きし不織布を掛けるのみで、ハウスなどは使用しない。本葉3枚、遅くとも3.5枚程度の苗を田植えする。

<雑草対策>
水稲除草は、田植え後8日目を目処に活着を確認してガンヅメを使用したあと、10日後くらいに動力の除草機を使用。その後7~10日おきに2~3回動力除草機使用の除草を目標にしているが、出来ずに手取り除草を8月始めまでやらざるを得ないこともあるのが実態だ。アイガモやジャンボタニシは利用していない。
麦、大豆や雑穀については、手取り除草と動力による中耕除草である。
お茶については、手取り除草で中耕はしない。

<病害虫対策>
イノシシや鹿の被害は、補助金で設置している電機柵により今のところはない。
病害虫対策は、自然の天敵によるバランスが取れているようで、特に対策はしていない。

<販売・流通>
販売は、農業を始めた当初から20年来の繋がりを持っている友人達を中心として、福岡や東京、京都などクチコミで広がった個人への直接販売が主力である。お茶などは、収穫した製品が出来た頃に手紙で知らせると、「待ってましたよ~!」と喜んでくれるお客さんがいるし、病気をした人を介して注文がある場合も多いそうである。次いで酒造業者と流通業者である。
販売価格については、作る者の想いを出すことが必要と思っており、お米は玄米で食べて欲しいから玄米でしか売らないし、その条件でよしとされる消費者の方や流通業者さんに販売している。
生産量に対する需要は一杯で、新たな販路開拓は出来ないため、現状ではお断りせざるを得ないこともあるとのことである。