地元中心にこだわりの蒸し茶を提供する安定経営

中尾さんは、お祖父さんから続く茶園三代目の当主で、先代から受け継いだ自園・自製・自販をモットーに、地元のお客様に喜ばれるお茶づくりを目指して、地道に努力しておられる。
芯の強さを感じさせる真面目で寡黙な人柄で、自分からアピールされることはないが、尋ねればポツポツと言葉少なに話される様子は、「この人の作った物なら」という安心感も醸し出す。
店舗も自社工場に隣接した本店と地元菊池市内のショッピングセンター内に設けておられる他は、道の駅や物産館など地元中心で、地域に根ざした茶園である。

有機農業をはじめたきっかけ

学校を卒業した後、家業を継ぐため静岡県のお茶農家で研修を受けていたころ、休日に訪ねた親戚の家で聞いた「これからは、安心安全なお茶作りも必要ではないか」という話が、心に残っていたことがきっかけの一つになっている。
何時のころからか、全国のお茶が皆同じ「鮮やかな緑色した薄味」の方向になってきて、地域の特長を活かした昔ながらのお茶がなくなっていることに疑問をもっていたことから、静岡の研修が終わり、就農を期に、家族を説得して10aのほ場で試験的に取り組んだ。次いで20年前から阿蘇の外輪山に連なる鞍岳山中腹の茶園150aを無施肥無農薬とし、現在はすべてのほ場で有機栽培されている。香り高くドロッとした蒸し製玉緑茶を目指している。

<栽培品目>
経営面積500aのうちボカシ肥を施用する有機栽培園350a、無施肥無農薬園150aのお茶専業農家。品種は、やぶきたを中心にかなやみどり、おくみどり、祖父の代に実生から育てた在来種を栽培している。

<ほ場環境>
標高90~100mの平坦地で土質は火山灰土の黒ボク土壌である。茶園のうち150aは標高300mくらいの中山間にある。

<土づくり>
土作りとしては、年に2~3回行う剪定や整枝せん枝時の切り落としおよび除草時の雑草を入れている。

<施肥>
無農薬無施肥以外の茶園には、魚粕を主としたボカシ(購入)を2~3月と8~9月にそれぞれ10a当たり100kgほど施している。

<雑草対策>
傾斜地の高土手の草刈りと園内の蔓性雑草取りなど雑草対策は最大の難問で、畦畔の草刈りを年4回それぞれ18人ほどシルバー人材センターにお願いしているほか、年に3回くらい茶園内の草取りを400,000円ほどで依頼をしている。

<病害虫対策>
整枝とせん枝でかなり対応できるし、天敵が増えて生息のバランスが取れているためと思われるが、茶葉に被害をもたらすような病害虫はあまり多くないので、特に対策は取っていない。
ただ、人を刺すチャドクガやイラガ、キンケムシ(モンシロドクガ)が発生した場合は、摘採時など茶畑作業に入った際に激痛に見舞われることになるので、米酢にニンニクと唐辛子を1年半程漬け込んだ液を300倍に薄めて散布することもある。

<流通・販売>
生産から加工、販売まで自社で、90%を製茶10%を荒茶で販売されており、売り先の地域は、主として地元の菊池市を中心とした県内とのことである。地元菊池市内のショッピングプラザに店舗を開いているほか、数カ所の道の駅や物産館でも販売している。
継続して受け入れてくれる販売先の確保が最も重要なことである。
揉み込みの効いた、風味があって薫り高い、喜んで貰えるお茶にこだわって作っており、安心できるお茶であることをアピールして販売している。