「医・食・農30年のあゆみ」

はじまり
 熊本の有機農業の運動は小山先生を含む数人の医学生による「熊本学生セツルメント」の創立にその源があると言える。医学生として「どんな医者になるか」を患者さん達に聞こうと、熊本市の貧しい人たちの住宅に住み込んで調べることから始め、天草地方、鹿本郡、河内へとセツルメントを続けていった。
 特に農村部には寄生虫、ハウス栽培による貧血や肝機能障害、食生活の偏り、みかん農家の薬害等、農村、農業、くらしの問題が山積みで、農村医学という分野が必然的に生まれていった。
 医療関係者はもとより、多くの業種、住民が参加して画期的な「新しい医療を考える会」(後の「新しい医療を創る会」)が設立され、その後行政も加わって「健康を考える会」として話し合いを重ねていくことになる。30余年も前のことである。そしてこれから医・食・農の3分野、「(財)熊本県健康管理協会」S47・「いのちと食べものを考える会」S52・「熊本県有機農業研究会」S49が誕生する。
 熊本に於ける新しい医療のあり方を「病気を治す」のではなく「病気をしない体を作る」即ち、予防医学の重視に求めたのである。

病気を作らない暮らし・食べ方
 長崎の同級生殺害に見られるような、自分達にとってイヤなもの、嫌いなものは末梢していいという風潮にたいし、全ていきとしいけるものには意味があり、抹殺してはいけないという有機農業の考えは対極にある。
 健やかに生きること、幸せに生きることとはほど遠い今の世の中で、どんな暮らしが病気を作るのか、人間の「生命のスケジュール」の全過程に関与する医療を目指した。
 元気な高齢者を作る運動は今問題になっている高齢者の医療費削減にもつながるし、生きる喜びと目標を持つことが出来る。
 命ある「食べ物」をいただき老化を止める。その為には体の細胞をさびつかせるという「活性酸素」を中和する抗酸化力を強めると良いが、人間は持っていない。だから太陽を浴びた力強い抗酸化力をもつ植物の力を借りることになる。地産地消のもので、なるべく新鮮なものがよい。化学物質の多様で抗酸化力を落としている野菜は避けたいというのであれば有機農産物しかないのである。

参考までに、90歳以上まで長生きしている人の共通点を述べましょう。
@ 小さい頃から何でも食べる。
A 卵を1日1ケちゃんと食べている。(ちなみに朝が効果的とか)
B 牛乳をコップ1杯飲んでいる。
昔は蛋白質の不足から寿命が縮んだが、現在は蛋白質の取り過ぎが病気を引き起こしている。

 有機農産物を作り、それを食する運動は、実は私たちが考えている以上に雄大な使命を担っているということを気づかされた講演会でした。もっと多くの情報をご希望の方は2000年発行の小山先生の著書「いのちの予防医学」(熊日新書)のご一読を。

編集注)セツルメント:settlement
宗教家や学生などによる下層貧民階級に対する社会事業の一つとして始まった。その事業内容はさまざまであるが、一般に、保育、学習、クラブ、授産、医療、各種相談などがある。日本でも大学サークルに多い。

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