有機農業リサーチプロジェクト No.015

田上 明さん

田上 明さん

有機で大きくてきれいな野菜をつくる名人

田上さんは山都町有機農業推進協議会の会長をされた篤農家である。
キャベツに「パダン」という農薬を散布して、よくかぶれて痒くなり、農薬を使うのはいやだと感じながらやっていた時、近隣の農家に勧められたことが有機農業へのきっかけとなったようだ。「有機でやり始めて試行錯誤しながらやっていく中で大変だということが多かった。やりながら環境や食の大事さなどをきちんと消費者に伝えていかなければならないということに気づいてきた」と言われるように、有機農業を実践していく中で有機農業の技術と思想を自ら作り上げていかれた様子が伺える。また、「有機農業でたくさんの収益を上げることは難しい。ある程度収益を有機農業で得られるようになればもっと有機農業の認知度が上がると思うし、そういう農家さんが増えてくるといいと思う。生き方としての有機農業も大事で、収益を上げることも必要だが、市場価格などでは測れない部分を大事にすることが重要」と思いを語られ、有機農業の役割や意義を大事にしつつも、有機農業の経営及び技術体系の向上が有機農業の普及拡大に繋がるということを強調されていた。田上さんも規模拡大などにより経営を向上させる意向であった。
山都町は典型的な中山間地であるため、農地条件の効率の悪さから労働力などの経費は平野部に比べ高くなってしまう。有機農産物として付加価値を加え、安定した価格で売ることは山都町の農業にとって有効な手段だと考えられる。

<栽培品目>
水稲:有機100a 減農薬30a 有機的栽培15a
チンゲン菜25a 、里芋50a 、レタス50a 玉ねぎ20a 後作でブロッコリー、にんじんを作る。 
ぶどう(慣行栽培):20a

<土づくり>
・自家製堆肥:約20t/年
材料:鶏糞、牛糞、もみがら、野草、米ぬか
 秋から冬にかけて6ヶ月かけて作り、自家製堆肥では足りない分を購入する。マニュアスプレッダーで散布。一人で作業できる。2t/10aで、 地力が上がってくれば減らす。
・稲わらの発酵を促すため発酵鶏糞を入れる。
購入資材:有機複合肥料、グアノ、油かす、カキガラ石灰
堆肥の混ぜ具合で成分をある程度調整する。窒素分を入れる場合は鶏糞、カリを入れる場合は牛糞をいれる。

<雑草対策>
・太陽熱処理
チンゲン菜は4月に10~20日間程度、米ぬか、堆肥、元肥、水をたっぷり入れ、雑草の芽が出たら古ビニールをはる。
にんじんは、7月に米ぬか、元肥も施用し(レタス後作なので堆肥は入れない)畝立てと同時に7日程度透明マルチを張る。芽が出た草が枯れているのを確認して、マルチをはいで播種する。

水田はアイガモとジャンボタニシ。ヒエは手除草。
田畑輪換で田んぼの雑草が減る。
アイガモは10aあたりで10羽で、管理が大変なのでジャンボタニシと併用している。除草能力はアイガモの方が高い。草が多い水田はアイガモ、少ない圃場はジャンボタニシとか。

<病害虫対策>
〇害虫対策
・BT剤 チンゲン菜に使用 コナガに効果がある。増えていきそうな時に散布する。冬場など少ない時期にはしない。 
・太陽熱養生処理 キスジノミハムシの卵が死ぬ。期間を長くすることで効果が上がるが、その分作付が遅れる。

育苗時の虫害防除
・育苗時に虫をつけないことが大事。2重トンネルにするとともに、粘着トラップを使用。
・定植時に苗を水に付け、成虫を水で流す。
虫を完全にいなくすることはできないので、虫の密度を減らすということが大事なポイント。

・ハウス、圃場での防除
ハウス:防虫ネット(1ミリ目)、粘着テープ ハウス内に侵入できないようにできるだけ隙間を開けないことが重要。どの様に侵入してくるか、水が好きか、乾燥が好きかなど、虫の習性を知ることも大事。ヨトウムシは卵塊をとり大元を断つ。

・露地:4ミリの防虫ネットでトンネル。
〇病害対策
 ・太陽熱処理:フザリウム菌や軟腐病に効果がある。
 ・輪作 アブラナ科の連作はしない。レタスは連作できる。玉ねぎ、里芋も連作せず、3年以上はあける。
・病気に対する抵抗性品種を選択する。

<流通・販売>
販売は一箇所に依存しているとリスクが大きいので、常に窓口を増やすよう心がけている。販売に際しては、安全性、おいしさ、作り方をアピールするようにしている。価格はやはり大事で、一定のラインは持っている。

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