有機農業リサーチプロジェクト No.016

飯星 幹治さん

飯星 幹治さん

家族経営のモデル
~作物を育て人を育てる~

【家族経営の形について】
作物別に親子で作業分担しているという形態は、2世代で農業に従事している家族には参考になるのではないでしょうか。収入も作物別でそれぞれの所へ入るようにしているとの事です。もちろん作物によって多忙になる時期はお互い手伝うこともあるそうで、仕事面でも経済的な面でも、つかず離れずのいい親子関係があるように感じました。
「有機農業を実践するうえでの一番のポイントは?」の問いに、幹治さんは「売り先と仲間」と答えられ、息子さん夫婦は「土づくりによる機能性野菜など質の良いもの」と言われたことは、時代を反映するようで興味深いことでした。
【技術面】
技術的には自家製堆肥による土づくりに力を入れているという点と、アイガモや太陽熱処理などによる雑草対策に色々な工夫がなされている点が特長的でした。
【人を育てようとする観点】
「人を育てる」という意識を強く持って、仕事上のグループや地域の集落がどうすれば継続されていくかという視点で、仕組み作りに取り組んでいらっしゃるのを感じました。息子さんがのびのびと仕事に取り組んでらっしゃるように見えるのも、その影響でしょうか。
「緑川沿いの地域が有機野菜の生産地となって欲しい」という100年がかりの大きな目標も、素晴らしい発想だと思いました。

<栽培品目>
◆年間生産計画 年間生産計画上記5品目を主体とし、合計15品目を栽培。
作物によって親子で分担している。
幹治さんは田んぼとハウスで水稲、タマネギ、小松菜、ホウレンソウ。
息子さんは畑で主にニンジンとリーフレタス。

<ほ場環境>
真土が多い。赤土から黒土の中間の土質で、水はけが良い。

<土づくり>
堆肥づくりに力を入れている。堆肥は全て自家製で、鶏ふん、米ぬか、稲わら、野菜くず、野草を原料とし、10aあたり1tを目安にしている。ボカシ肥は使わず堆肥が主体で、肥料分は購入資材(肥料)で補う。窒素分が多すぎると虫が寄ってくる。ウサギのフンを原料として入れる年もある。醗酵しやすいのが特長で、実験用ウサギのフンを入手できるので、抗生物質が含まれている心配もない。

<施肥>
【購入資材】
ニューパーフェクト有機  
オーガニック813
パワーオルガー(6-8-4)
ケルプペレット(微量要素):ホウ素、マンガン、鉄
クワトロミネラーレ(微量要素):銅、亜鉛、鉄、マンガン
アイアンパワー:鉄
マンガンパワー:マンガン
【試しているもの】
竹パウダーは根張りがよくなるので試している。育苗土に混ぜると、がっちりした苗ができる。堆肥に使うには費用が高いが、窒素過多の調整には良い。C/N比が高いので、鶏ふんと併せた使い方をしている。竹パウダーを入れ過ぎると窒素分が不足するので注意する。

<品種選び>
ニンジンは、かつては作りやすさで選んでいたが、最近では栄養価の高さを見て選ぶようになった。固定種の方が栄養価は高い。小松菜は、連作に耐えられるかを選ぶ基準にしている。

<雑草対策>  
・太陽熱養生処理:主にニンジンの播種前に行う。土壌の水分が60%くらい(※)になるようにして、積算温度600~900℃(※※)までビニールで被覆する。
(※) 握って固まった土が、指で軽く押したら崩れる程度。
(※※) その日でいちばん高温になった時の温度を記録。14時ごろの温度を記録することになる。積算温度600~900℃になるには、夏場でも10日以上は要する。
・ポリマルチ:主にタマネギ、レタスで使用する。
・播種・植え付け前3回の耕起
・アイガモ:田んぼの除草に役立っている。
その他、中耕、手取りと色々なやり方を組み合わせて雑草対策をとっている。

<病害虫対策>
【堆肥】
田畑に入れる堆肥の窒素分が多いと虫が寄り付きやすくなるので気をつけている。
【輪作】
稲刈り後のワラは、畑に入れるようにしている。また、前後がなるべく違う科の作物になるようにしている。
例) 小松菜に虫がつくシーズンが続いたときは、その場所でホウレンソウを栽培する。
【資材】
秋口などとくに虫の多い時期には防虫ネットや不織布を使用する。

<鳥獣害対策>
・イノシシ除けに電柵を使用する。田んぼの周辺には、電柵に加えてネットも張る(アイガモが逃げないように)。
・カラスの害:若苗(とくにレタス)を引き抜いたりする。アイガモがやられる時もあるが、十分に育ってから田んぼに入れると被害にあいにくい。
・その他、シカ、タヌキ、キツネの害も稀にある。

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