理論的自然農法

高等学校卒業後、関東でサラリーマンをされていたが、バブル崩壊後帰省。お父様の他界もあり46歳の時に就農された。「当時は今で言う減農薬栽培を行っていたが、妻の知り合いから『無農薬ニンジンが欲しい』と言われことがきっかけで、自然栽培と出会った」と言われる。
土壌の生成に関してのお話は興味深く理論的だった。植物の土台となる「土」を理解するため土壌生成論を学び、自然循環から生まれた腐植前駆物質を利用し、かつ肥毒を抜くということを基本とされている。最も重要なことは、作物や土に起こる様々な現象を感覚的に感じ、対応できる知識を身につけることだと言われる。栽培方法は科学的で「ワラなどをすきこむと、そのワラ=有機物はどのように分解され、どのような物質に変化し、作物にどのような生理作用があるのか」を理解しておられ、もはや自然農法ではなく理論的自然農法と言えるものである。
しかも、非常に勉強熱心な元田さんは、自然農法にしばられず、他の農法の講習会にも参加される等、、栽培や農業への知識を深めようとしておられた。
新規就農者へのアドバイスは、「流通の流れや需要など、農業界の状況を調べ、ビジネスプランをしっかりたてること」。流通の法人組織を設立され、インターネット等も利用した販売を展開している元田さんならではの助言である。

<栽培品目>
栽培品目を決めるときのポイントは、その種の生い立ち・起源などまで調べる。また、播種後の管理を考えるよりも、「土づくり」が大切だと考えている。ネギは周年栽培。

<土づくり>
土づくりのポイントは土を理論的に理解すること。土壌の成り立ちなど勉強していくうちに、そのポイントが腐植(有機物が分解したもの)にあると判断。以来、腐植になる前段階の液状物質「土菌ちゃん」を自身でつくり、栽培に活用している。
・「土菌ちゃん」の基本的な作り方(元田農園HPより抜粋)
①水槽に水を1000リットル張る。
②好みの堆肥(有機質50~70%程度)を20~30kg(水槽容量の2~3%)ネットに入れ水の中に吊るす。
③市販の腐植前駆物質水溶液1~1. リットルと、粉末シリケイト(ケイ酸塩)を約100g入れる。
④エアレーションを開始する。空気量は1分間に40リットル程度。
⑤72時間(3日間)経過後堆肥のみを取り出し、エアレーションは継続する。
⑥エアレーション継続3~5日後、大腸菌群を確認する。
⑦大腸菌群が不検出であることが確認できたら使用できる。

<施肥>
施肥はしない。逆に不要な肥料成分を土から抜くことを行っている。この不要な肥料成分を「肥毒」と呼び、土の中の肥料や農薬が溜まっている層(場所)を「肥毒層」と呼んでいる。土を掘って温度を測ると、地表20センチ~50センチの部分に、地温がいちど下がってまた上がる部分があり、そこが「肥毒層」である。肥毒の除去方法は雑草などに吸収させ、ほ場外に持ち出している。

<育苗>
・水稲苗
まず苗箱に田の土約200cc/枚入れその上から山土(水稲苗用)とくん炭を5:5で配合したものを入れる。そこに温湯消毒した籾を「土菌ちゃん」10倍液に12時間浸し乾燥させ、は種する。育苗中に苗の調子が悪い場合等には、適時「土菌ちゃん」を散布することもある。
・ネギ苗
過去にはチェーンポットを利用しひっぱり君で定植をしたこともあったが、現在はハウスに直播して育苗している。

<雑草対策>
基本的に機械除草(管理機、モア等利用)で効率化を計っている。しかし時には手で取ることもある。除草作業の割合は全体の作業に対して、畑(野菜)は8/10、田(米)は4/10である。
ネギでは、いままで管理機による中耕で除草を行ってきたが、今後はマルチを利用した抑草にも努めてみようと考えている。

<病害虫対策>
肥毒除去や腐植前駆物質を利用した良い土作りによって、作物体を強くして病害虫に負けない健康作物を作っている。特別な場合は「土菌ちゃん」を散布することもあるが、基本的に対策はほとんどしない。

<今後のこと>
現在、流通に関しては法人を設立した。今後は米・ネギの栽培技術的は確立されてきているので、栽培の分野でも法人を立ち上げたいと考えている。また人材を育成しながら規模を拡大し、雇用も増やしたい。
栽培方法は確立されつつあるので、これからは効率化が課題である。効率を上げることで生産を伸ばし、その結果、より多くの人が仕事に関わることのできる環境を作りたいという思いがある。