生産・販売・有機農業推進・地域づくり・後継者育成

平成3年くらいから合鴨稲作で有機農業を始めた。それまで有機稲作をしていた人達は雑草を手で取っていたが、農協から「合鴨稲作の面積を増やしたい」と声がかかり、価格が良かった事や、息子がアトピーになり病院に行っても治らないので、食べ物が原因ではないかと思いはじめていた事もあり、誘いに応えた。
50aから始めたが、最初は合鴨が逃げたり、草だらけになったり試行錯誤だった。合鴨を入れるタイミングなどいろいろ試していたが、1年に1作しかできないので、技術が確立するまでに5年くらいかかっただろう。一つの農法として確立する必要があると思う。自分の知らない間に誰かが見かねて鴨を入れてくれたり、地域の人が協力してくれたから出来たのだと思う。今では集落全体に環境保全型農業が広がっている。
山都地域バイオ燃料協議会や山都町竹資源利活用協議会の会長を務めるなど、地域において環境保全型農業を推進する活動に尽力されていることからも、有機農業と地域活性に強い想いを持っておられることを感じる。また、有機農業への理解を消費者へ広げるという想いから、消費者との交流事業にも盛んに取り組まれている。藤本さんのお話からは生産、販売、有機農業推進、地域づくり、後継者育成という5つのキーワードが出てきたが、一番印象に残ったことは、「有機農業は中山間地域に適している農業でもある。人の口に入って喜んでもらえる農業が自分の喜びになる。それを実践していきたい」「有機農業は地域で助け合ってやらないとできない」という言葉だった。今後、地域での取組や有機農業技術などを地域の後継者へと繋いでいかれる事を期待したい。

<栽培品目>
水稲350a、収量7~7.5俵/10a
ポイント
中山間地域は平地と違い分げつ数が少ないので、植付け本数を5本くらいにすると収量が上がる。
他には減農薬栽培で小ネギ、ほうれん草を栽培している。

<ほ場環境>
土質:砂壤土、標高:430~450mの中山間地

<土づくり>
野草堆肥:あぜ草を何箇所かに分けて積んで発酵させる。
元気有機堆肥:投入量20袋/10a(400kg/10a)

<施肥>
パーフェクト有機:投入量60kg/10a
元肥は4月に施肥。追肥をする場合は出穂の20日前にする。

<苗>
育苗用土:赤土、粉状パーフェクト有機50g/1箱 、竹粉
竹粉は芽が出てから育苗用土の20%程度の量を上からかける。苗の張りが良くなる。

<雑草対策>
田植え後すぐに合鴨用ネットを張り、周りにイノシシよけの電柵を設置する。田植え後20日前後で鴨を入れる。投入羽数は7羽/10a(草の量により変える)。1枚が10aより狭い水田の場合でも、合鴨は群れで生活する習性があり臆病なため2匹くらい入れても仕事をしないので、最低5羽は入れるようにする。慣れたら少し減らしても良い。カラスやイタチなどに狙われるので、テグスなどの防除が必要。合鴨が草を食べるより踏み込む方が除草量は多いようだ。稲穂がつく前に合鴨を水田から引き上げる。

<病害虫対策>
虫害:ウンカは鴨が食べてくれる。昨年は全国的にウンカの被害が多かった年だったが、まったく被害がなかった。
獣害:200aの農地では電柵が必要。年々イノシシの数が多くなって困っている。

<流通・販売>
売り先:農協、直売所
販路開拓
直売所主催の消費者との交流イベントでイチゴ狩り、田植え、稲刈り体験など直接消費者に圃場を見てもらったり、消費者と触れ合えるようなイベントをしている。昨年は5家族に水田を貸して一緒に稲作をした。田植えで機械を使わず植えるなど消費者の方も悪戦苦闘しておられ、苦労して作ったお米の美味しさをわかっていただけたと思う。今は有機でお米を作っても2万円もしないこともある中で、稲作を体験した消費者の方が「自分で作ったお米は5万円でも売りません!」と仰っていたことからも消費者の方が米の価格を見直すきっかけになってくれればと思いやっている。