新規就農者が出荷できる体制づくり
水稲、葉菜類、根菜類の野菜を少量多品目で年間を通して効率よく回転させている篤農家である。特に葉物は植付け時期をずらすことで効率よく出荷すること、里芋は植付、収穫、貯蔵以外にほとんど手をかけないよう、マルチを張って雑草対策を行うなど、効率を重視し生産されている。また、販路拡大として新規就農者が出荷できるような体制作りにも取り組まれている。
有機農業をはじめたきっかけ
立ち上がってすぐの御岳会に入ったのが有機農業を始めたきっかけだ。その前は水稲、しいたけ、畜産が主で、野菜はほとんど作っていなかったが、じゃがいもを依頼され作り始めた。「農薬を使ってはいけない」と言われて作ったのが初めての有機農業で、有機農業がしたくて始めたわけではない。 当初は売り先が少なくて、採算が取れないのを覚悟で熊本市、福岡市に交代で配達していた。3年目くらいから品目・出荷量も増えて、運送も委託できるようになった。 現在、農地が増えていっているが増やそうと思って増やしているのではない。有機JAS規格でやっていくうちに有機栽培の圃場が増えていった。立上げ当初の御岳会の仲間は当時20代がほとんどで、みんなで知恵を出し合い、助け合いながらやってきた。今もその仲間達と売り先の確保、出荷の分担などいろいろな面で協力し合っている。
経営規模:水稲 3ha 野菜 3ha
栽培品目:レタス、リーフレタス、玉ねぎ、にんじん、里芋、ピーマン、こどもピーマン、にんにく、米(ヒノヒカリ)、乾燥しいたけ、じゃがいも、かぶ、ほうれん草、ターサイ、水菜、ナス、乾燥しいたけ
<圃場環境>
標高:約500mの中山間地。 土質:火山灰、白真土、水田は砂地。
<土つくり>
堆肥:水上養豚から購入。里芋は1t/10a、ピーマンは牛糞堆肥を10t/10a
<施肥>
バランス(6-8-4)、ニューパーフェクト有機(6-8-4)
里芋:100kg/10a 圃場の土質により変える
ピーマン:今年の分析結果から 牛糞堆肥3t/10a バランス400kg/10a 有機石灰600kg/10a
米ぬか450kg/10a、収穫が始まった頃から月2回(7月~9月)追肥する。
目標収量4t/10a
<種>
種は基本的に購入する。里芋、にんにくは自家採種。
・里芋種貯蔵方法
畑に深さ40cm、幅1m、(里芋の量により長くなる)の穴を掘る→根を上にして里芋を株ごと入れる→種が見えなくなるまで茅を被せる→30cmくらい土を被せる。→注文量により随時掘って出荷する。(次作分の種芋は残す)
里芋種子量:150kg/10a
ニンニクはカビが生えないように吊り貯蔵する。
<苗>
自家育苗するもの:玉ねぎ、レタス、リーフレタス、白菜、水稲
玉ねぎ:8月の中旬に太陽熱処理をするために黒マルチを張る。9月上旬にマルチを剥いで鎮圧し、播種機で種播きする。
レタス、リーフレタス、白菜:用土はそよう有機床土と籾殻くん炭を3:1の割合で混ぜて作る。水管理を徹底することが大事。
水稲:床土は赤土のみ。有機水田で育苗する。苗箱を並べる床にバランスかニューパーフェクト有機を撒く(苗箱130枚につき10kgくらい)。
<雑草対策>
・雑草対策が一番。早めに草を抑えることが大事。早めに手を入れたのと入れていないのでは大きな違いが出る。
・葉物の段取りを上手にすること。葉物栽培では長期間にわたって播種、定植、収穫、片付け時期をずらしながら順次出荷していくが、作業が重なってくると、いかに効率よく作業するかがポイントとなってくる。
・夏播き人参はビニールマルチを利用して太陽熱処理をし、雑草を抑える。そのため播種時期は遅くなる。
・里芋はマルチ、溝マルチで雑草が生えないようにしているため、ほとんど労力がかからない。
・水稲はアイガモ、米ぬか除草が主だが、去年からチェーン除草を試している。アイガモはネット張り、餌やりなど、管理に労力がかかるため、来年からはチェーン除草のみでやってみようと思っている。チェーン除草は、田植えの1週間後から1週間ごとに3回実施する。
<病害虫対策>
病害対策:ピーマン斑点病にはZボルドー(銅剤)
鳥獣害対策:イノシシにはワイヤーメッシュと電柵。ワイヤーメッシュの支柱は経費削減のため。中古ハウスのパイプを曲げて作成している。
<流通・販売>
・出荷先:専門業者、九州生協、直売等
・販路拡大について
山都町の生産者、新規就農者が出荷できるよう「肥後山都の会」という組織を立上げ販路拡大を行っている。新規作物を導入し、出荷できる品目を増やし、会のメンバーで分担して出荷できるような体制作りを現在行っている。