タマネギ10aで8tを実現 土づくりで有機農業を牽引
農業歴35年、有機をめざして25年。今では、一部有機で許可された農薬を使用することはあるが、無化学肥料・無農薬栽培。有機栽培を始めた動機は、農薬散布時の飛散・付着と農作物の汚染への懸念と言われる。
◆年間生産計画
<ほ場環境>
土質は砂壌土(赤土に砂が混ざった土)で、付近は牛深の湾口に隣接するが背後は山間地帯である。
畑圃場はこの地帯に位置し、川の水を水源とする水田も散見される。
<土づくり>
堆肥を近隣の養豚農家から年間20t調達している。畜産農家側でバークを混合し持って来てくれる。エアーレーションを自作で設置した堆肥舎でさらに強制発酵させ、質の向上を図っている。
土壌分析をしたうえで、この堆肥を全圃場に10a当り1t~2t投入している。
バーク入り豚プンを使用する理由は豚プンの肥料効果とバークの土壌改良効果を期待したものであるとのことであった。タマネギの生育後半の肥料切れ対策として、鶏糞を追加した堆肥作りの試験もおこなっている。
<施肥>
ぼかし作り
1.材料・米ぬか(17%):魚粕(14%):油かす(17%):血粉(23%):皮粉(24%):カニガラ(5%):土着菌(山土腐葉土) (0.05%)
2.作り方
①まず土着菌がたくさんついている竹林の腐葉土10kgと米ぬか60kgを混合。水分60%に調整し2週間かけ土着菌を培養する。
②次に米ぬか500kgに①を混合。ここでも水分を60%に調整し2週間土着菌を培養する
③②に残りの米ぬか、魚粕、油かす、カニガラ、皮粉1/4を混合し水分60%に調整し、2週間に1回切り返し 約2か月間発酵させる。
④②の水分が20%以下になったところで残りの血粉と皮粉を混合して出来上がり。
肥料切れに対応するため、この時点での発酵・分解はさせない。
*期間は6月~10月に4カ月をかけて製造する。N成分5%以上を目標に作り10a当り200~400kgを施用する
平成26年度のぼかし総生産量は17tにもなる。
<苗>
タマネギ苗は自家育苗。8月27日からは種開始、50日苗で定植。苗床は土壌分析をし、不足分を自家製ぼかし・自家製堆肥・ミネラルで施用している。
苗床は太陽熱処理を実施している。
<雑草対策>
・黒マルチ、手取り、畦間は草刈り機
・苗床は太陽熱処理
※太陽熱処理の方法・・・土壌分析をして不足分の自家製ぼかし、ミネラルを施用。耕耘し畦を作りハウスの廃ビを全面に被覆しビニール押さえで止める。期間は8月1日から9月1日まで1か月間
<病害虫対策>
土作りによって健康的な作物を作ればある程度回避・予防できる。ただし発生したときは以下の対応を取っている。
<病気>
・タマネギ べと病・・・近年あまり出ないが出たときは木酢+カルシウム(500倍液)
・インゲン 灰色かび病・・・木酢液または米酢+カルシウム液
・カボチャ うどんこ病・・・イオウ粉 納豆菌培養液(100倍)
<虫>
・タマネギ ヨトウムシ・・・苗の時に寄生するのでBT剤を散布する。納豆菌培養液10倍
※それ以外の作物は近年発生が少なくなり防除の必要性がなくなってきた。
・木酢+カルシウム液の作り方
牡蠣殻粉末に木酢を加えて撹拌。泡立ちがおさまったあとに上澄み液をとる。通常500倍液で使用する。
・井上式天恵緑汁の作り方
ひじき(海から採取した生のままを使用)と黒砂糖を1:1で漬け込み1か月間熟成させると、ひじきの水分がしみ出てくる。これを500倍に薄めて葉面散布する(活性剤として)。
・納豆菌培養液の作り方
市販の納豆6パックに黒砂糖2kg・水70ℓを加えて2日間エアーを入れて培養する。
納豆菌による病原菌の抑制効果とヨトウムシへの効果を期待している。
<鳥獣害対策>
・電気柵(市より半額助成を受ける)。
<流通・販売>
・販売先割合
生協・・・80% 流通業者・・・15% 直売所及び個人注文・・・5%