吉無田の種取り名人

農業歴60年、有機(自然農法)歴20年。もともとは養蚕農家だったが、昭和61年に秀明会に入り、平成4年に九州の秀明会の中で最初の農家として野菜の栽培に取り組み始められました。
特長的なのは、種取りをする種類の豊富さです。水稲はもちろん、ニンジン、キャベツ、ネギ、ゴボウ、ホウレンソウと多彩です。畑を長期間占めてしまう事になるので種取りまではなかなか取り組めないものですが、こうした地道な作業が増田さんの自然農法の基盤となっているようです。
自家製堆肥と雑草の鋤き込みだけで施肥はしないとの事で、肥料無しでも植物が育っている「山を見る」農法で、収穫までたどりつくやり方に感心することばかりでした。
研修生も絶えずいらっしゃるようで、研修後にそれぞれの環境でどのように自然農法に取り組んでいるのかも興味深いところです。

◆年間生産計画

<ほ場環境>
吉無田高原に圃場がある。標高は約500mで、赤土の畑と黒土の畑がある。

<土づくり>
土づくりに関してはシンプルで、堆肥づくりと雑草の鋤き込みのみ。
【堆肥づくり】
原料は刈り草、米ぬか、腐葉土(もしくは畑の土)。最初はサイロの匂いがする。仕上がりの良さも匂いで判断する。鳥が食べに来るようになったら本物と言える。
※竹の粉、米ぬか、もみ殻の組み合わせでも試している。

<施肥>
購入資材(有機肥料)を入れることはない。自然農法なので、降ってくる雨も肥料ととらえている。有機物(雑草)をトラクターで鋤き込むが、これも肥料ととらえている。
現在試しているのが、孟宗竹の粉(竹パウダー)。堆肥の材料にしたり、育苗土に混ぜたりする。

<種>
種取りしているのはニンジン、キャベツ、白ネギ、ゴボウ、大根、赤ホウレンソウ、水稲と多彩。
・ニンジン:8月下旬に種まきし、翌年6月に種取りする。
・大根:3~4年ものでも使える。
これとは逆に豆類は年数がたつと発芽率が落ち、2年ものだとせいぜい30%くらいではないだろうか。
・ネギ:5~6月の種取りがベスト。育ちのいい株ばかり種にしようと畑に置いていても、必ずしも良い、種が採れるわけではないのが不思議。

<苗>
苗には堆肥を施している。畑に堆肥は入れない。
<雑草対策>
手取り、雑草利用、草成栽培、中耕・培土、播種・植え付け前のロータリー耕起を組み合わせている。
【雑草利用、草成栽培】
畑に5種類以上の雑草があったら良しと考えている。草の根から出る液が、作物にとって養分となり健全に育つイメージ(輪作の考え方にも通じるか?)。
【資材について】
マルチは10年くらい前までは使用していたが、最近では使用していない。マルチやビニールハウスなどの資材に関しては秀明会の使用基準に沿って使っている。
※圃場を見せていただいたときに使用されていた資材は、お茶の木の霜よけにかぶせてあった黒いネットのみ。

<病害虫対策>
【鳥獣害】
・電柵:イノシシ対策。
・テグス:キウイに寄ってくるカラス除け。
・寒冷紗:豆類の種まき後、ハトよけに使用。
【病虫害】
とくに種取り前のキャベツに寄ってくるアブラムシに悩まされている。
品種の選択には気をつかっている。

<流通・販売>
秀明会の会員用セット野菜か、秀明会が出しているお店での販売。