作物をよく観察し、作物と話し合う事が大事
若い時から養豚業を営まれていたが、昭和48年9月に船津さんという人が八反田さんの栽培しているキャベツを3つもらわれ、当時有機農業の普及に力を入れておられた児玉達雄氏(熊有研2代目会長)がそのキャベツを食べて、「とても美味しい、この人をメンバーに入れたい」と言われたことが有機農業の道を歩むきっかけとなったそうだ。児玉氏に連れられて全国に視察に行き、見た技術を帰って実践することにより有機農業の技術を身につけていったと言われる。
「輪作体系を組む」や「風通し、日通しを考えて植付ける」など、病害虫対策の基本技術をしっかりと守りながら、太陽熱処理や土壌分析結果から施肥設計するなどの新しい方法も取入れられている。
「作物をよく観察し、作物と話し合う事が大事。作物の『収穫して!』や『肥料をくれ!』などの声が聞こえてくる気がする。また、日の出、朝、昼、夕方、日の入りなどの時間帯によって作物の姿がぜんぜん違う。よく観察し、作物の声を聞き、その声に応えるような管理をすることを心掛けている。」との話は、熊本の有機農業の推進、普及の歴史を自分の目で見ながら、自らも40年近く実践されてきたベテラン農家だからこそ言える言葉かもしれない。
<栽培作物>
◆年間生産計画
水稲1.5ha(裏作でオオムギを栽培):ヒノヒカリ、もち米
野菜80a:ニンジン(黒田五寸)、フカネギ(九条ネギ)、サトイモ(ハスバ)、ホウレンソウ(アトラス)、アズキ(ダイナゴン)、ジャガイモ(アンデス)、ダイコン(耐病総太り)、ニンニク(カテイ種
<ほ場環境>
標高:30m 土質:黒土と赤土が混ざった土
<土づくり>
今は購入の有機質肥料パワーオルガを使っているが、以前は豚糞を使っていた。堆肥を入れるなら馬糞が良い。馬糞にラクト菌を入れて畑に入れると土がフカフカになる。ラクト菌が養分を調整してくれるので入れすぎても効きすぎがなく、失敗が少ない。牛糞は塩分があるのでほとんど使わない。その地域にある材料を使って堆肥を作ることが好ましい。
輪作体系を組み立てることも重要。4年に1回はイネ科作物を入れると、虫や病気が出にくくなる。特に、ジャガイモの後は病気が出やすいので、トウモロコシやソルゴーなどのイネ科作物を植える。サトイモは連作しないなど、畑になにを植えたかを記録しておき、輪作体系を組み立てることが重要。
<施肥>
くまもと有機の会で土壌分析し施肥設計して入れる資材を決めている。土壌分析による施肥設計は一番の近道でありムダが少ない。
<雑草対策>
・太陽熱処理
肥料を入れ、25センチ程度に深く耕す。→雨やかん水などにより土壌水分を60%にする。(握って固まるくらい)→ビニールを張る→毎日13:00に土の温度を計り、積算温度600~900℃になったらビニールを剥いですぐ播種する。雑草が抑えられるだけでなく、土壌の団粒化、病害虫の抑制、ミネラルなど養分のバランスを良くするなどの物理性、生物性、化学性を良くする効果がある。割れないとてもいいニンジンができる。ぜひ試してもらいたい方法である。
・手除草、機械除草
できるだけ機械で除草できるように真っ直ぐに植えるようにしている。草が大きくなる前に除草すること。
・水田はジャンボタニシ
まず、水田を平らに均すことが一番重要。水管理については、田植え後さっと水を入れ稲に吸わせた後は、田植え後2週間は足跡に水が残るくらいにし、稲、草の様子を見ながら徐々に深くしていく。