仲間と共に食味ランキング上位の大規模有機経営

中島さんは、専業農家が大幅に減少した中、残った近所の若手仲間6人で「夢クラブ」というグループを作り、農業の未来と地域の活性化を目指すリーダーとして力強く進むとともに、有機栽培の米麦とハウス切り花を経営の柱に大規模経営を実現されている。
有機栽培については、真面目な人柄で確固たる考え方をもって取り組んでおられ、米作り技術の確かさは、菊池市で開かれる食味会で何度も食味ランキング優秀賞を受賞していることからも伺える。

有機農業をはじめたきっかけ

七城町は、昔からもともと米作りに熱心な農家の多い土地柄であるが、「七城のこめ」が全国の名産米を集める料理新聞社「クックメール」主催の米の食味会において1996年、1998年と2度に渡り全国1位を獲得した。2001年度に財団法人日本穀物検定協会主催の食味ランキングにおいても「熊本城北」産のヒノヒカリがこの品種としては全国で初めて最高位「特A」を受賞するなど高い評価を得てきた。
このことが、中島さんの農業生産に影響を与え、安心安全で美味しい米を作ればちゃんと評価して貰えるのだということを実感し、近在の先輩達にも触発されて有機農業に取り組むきっかけになったということである。

◆年間生産計画

経営面積は水田630aで、うち有機ほ場500a。他にハウス130a。
栽培作物は、水稲が500a、裏作は裸麦を500aの他に一部借地でも作っている。また、ハウスには切り花のトルコギキョウを栽培している

<ほ場環境>
菊池川流域の平坦水田地帯(標高40m)で、土質は、水はけの良い真土である。

<土づくり>
稲ワラや籾殻、雑草など土地に生えるものは、土地に返すことを原則としている。

<施肥>
肥料は使わないが、地力が低く収量の少ないほ場には、麦作の前に堆肥を10a当たり1~1.5tほど施している。堆肥は、秋口に畜産農家からの牛糞と稲ワラと籾殻を5:3:2くらいの割合で混ぜて作る。この時、発酵促進のために近くの有機JAS認証農家から分けてもらう米ヌカと発酵菌(納豆菌)を加えている。切り返しは、2ヶ月毎くらいに行い、1年程寝かせておく。

<種>
麦は自家採種しているが、品種はイチバンボシとダイシモチである。
水稲は、品種更新のこともあるが、温湯消毒までしてくれるのでJAから購入している。品種は、ヒノヒカリとコシヒカリを使っている。

<苗>
種子はJAが温湯消毒して乾かしたものを配達するので、自宅で4日間浸水してハトムネ状になったら水切りして1昼夜乾かしておく。育苗箱にフルイかけした赤土を入れて、は種、覆土してたっぷり水をかける。
苗床は、荒代あけて均平にならした後、トロトロにしないで一旦水を落としてひび割れが入るまで干し固めている。その方が後の作業がしやすいし、何故か解らないが、苗が徒長せず硬くなる。乾いてから穴あきシートを敷き、育苗箱を並べて白の不織布をベタ掛けして、育苗箱の縁ぎりぎりまで湛水する。
苗の徒長を防ぐため、1週間程度(発芽直後)で不織布は取り除く。それでも黒米は伸びすぎるので、根と茎を押さえることで苗の根張りをよくするため、塩ビパイプでローラーかけをしてストレスを与える。
草丈17~18Cm、本葉4~5枚くらいで田植えする。

<雑草対策>
ジャンボタニシを利用しており、ほ場を均平にならしておくことが重要であるから、荒代掻きの時に念入りに作業する。
田植え後10日くらいは浅水にして稲の活着を待つ。活着を確認したら水を増やし、ジャンボタニシの活動を促す。年にもよるが、この間に雑草が生えて目立つようなときは、動力の除草機を入れることもある。裏作に麦を作るので、ジャンボタニシが増えて困る程には増えない。
稲刈り時に稲ワラは短く切り散らしておくが、11月に堆肥を入れて、プラウで20~25cm荒起こしを行い、耕耘して麦をは種する。
麦作期の雑草は中耕培土機や動力機で除草する。

<病害虫対策>
何もしていないが、特に大きな問題はなかった。ウンカの被害は、昨年はなかったが今年は少し出てしまった。7月下旬~8月上旬に1週間程中干しを行うが、中干しが十分でないとウンカの被害が多いように感じている。今年は、葉枯れやカメムシの被害も少し出たとのことである。

<流通・販売>
日本穀物検定協会等の団体や、県市の食味コンクールにおいて上位にランキングしたことで関心を集め、流通業者のホームページやSNSで紹介されて販売が伸びてきた。米の販売は、県内にクチコミで広がった個人が30%、70%が流通業者(4社)である。麦の場合は、加工業者との契約栽培で増やしてきた。今後は、ネット販売も考えている。
販売に際しては、安全と環境に妥協の無い米作りを行い、より自然な美味しいお米を目指している事をアピールしている。