アイガモと冬期湛水で作るお米

田中さんは有機JASの審査員でもあるからか、有機JASで要求される生産行程の管理を徹底してされている。
30歳くらいの時に、御岳農協がアイガモ農法を初め、その後、矢部農協も取り組みだした時に田中さんはアイガモ農法を始められている。最初はアイガモが脱走して他の人の田んぼに入って出て来なかったりカラスにやられたりして、アイガモを管理できるかどうか心配だったそうだが、30年の実践の中でアイガモ農法の大変さや利点を知り尽くし、今は効率良くされている印象を受けた。
冬期湛水も特徴的である。これは矢部地域ではあまり見ない技術だ。田中さんが冬期湛水をする一番の理由は「地下水の保全」と言われるように、田中さんの環境保全型農業への熱意を感じる技である。

<栽培品目>
◆年間生産計画

<ほ場環境>
土質は赤土で粘土質で少しシラスが入っている。環境は中山間地で標高は400~500m。夏は涼しく冬は
寒い。日当たりは悪くない。

<土づくり>
トラクターでなるべく深く、なるべく回数を多く耕すようにしている。土壌改良資材は最近は使ってい
ないが、ラクトバチルス(乳酸菌の一種)が入ったものを使っていた。稲わらは鋤込んで農地還元して
いる。冬期湛水は稲わらの分解を早めるという目的もある。

<施肥>
追肥時期を見極めることが大事。有機肥料は即効性がないので出穂時期から逆算して追肥の時期を決め
る。また、葉色を葉色板で生育診断して追肥時期や量を決める。分けつ数15~20 くらいの時に追肥をし、
最終的には20 本くらいになるようにする。
〇水稲
みのる有機:元肥用(4 月)で100~200kg/10a、ほ場の地力を考慮して量を調整
ニューパーフェクト:元肥、追肥、育苗用で40~60kg/10a、ほ場の地力を考慮して量を調整。
〇里芋
みのる有機:元肥用(4 月)で100~200kg/10a、ほ場の地力を考慮して量を調整。
ニューパーフェクト:元肥用で60kg/10a、ほ場の地力を考慮して量を調整。
〇大豆:無肥料

<雑草対策>
・ジャンボタニシ
ジャンボタニシは上の田んぼから入ってきた。昔は越冬しなかったが最近は越冬して増えるようになっ
た。
・アイガモ
アイガモは12~13 羽/10a、全部で70 羽。ほ場4 枚をローテーションで移動させる。水がないとアイガ
モが脱走するので中干しはしない。
・冬期湛水及び手除草
中途半端な冬期湛水はかえって雑草を増やすことになるので、しっかり水をためて管理するようにして
いる。

<苗>
苗は3年前から購入していない
・自家製温床土の作り方
①サツマイモ用踏込床土・・・厚さ30cmの稲わらとヌカ、発酵鶏糞を混合しながら踏み込み、温床を作る。その上にモミガラを5 cm程度敷くことで、熱が直接イモに当たらないようにし、その上に山土、完熟発酵鶏糞を混ぜたものを15 cmほど入れて、サツマイモの苗床とする。
②春にサツマイモの育苗を終えたものは、秋から冬にかけて2〜3回切り返しながら、ぼかし、鶏糞堆肥、カキガラ、大量のくん炭を混ぜて、さらに切り返しておく。翌年の春にこれを床から取り出し野菜の床土とする。
③果菜類ではこれをそのまま使い、葉菜類では肥料成分を落とすため、くん炭と山土を加えて使う。
くん炭も、自家製のもみ殻をくん蒸して作る。

<雑草対策>
・畑 :①黒マルチの利用 、②管理機による中耕除草 、③手取り
・水田:ジャンボタニシの利用
移植直後から2~3週間は極力均一な浅水にしてイネを食害するのを防ぐ。
その後2~3週間は深水に切り替えて、ジャンボタニシが動けるようにする。
最終的に残った場合は手で取る

<病害虫対策>
〇害虫対策
アイガモが虫を食べてくれ、しっかりとした健康的な株ができるのでトビイロウンカの害が少ない。昨
年は他のところでは被害が多かったが、田中さんの田は害がなかった。
〇病害対策
いもち病、紋枯れ病は収量に大きく影響するので注意している。株間を開け風通しを良くするようにし
ている。40~50 株/1 坪
〇鳥獣害対策
カラスがアイガモを殺して食べるのでテグスを張っている。タヌキ、イタチの被害もある。猪の被害が
近くで増えてきたので、今年は電柵をしようと思っている。