里山の銘茶を生み出す技術者
窒素分が多いと、旨味は出るが香りは落ちるとの事。窒素分を過多にしないことは生育や病害虫予防の面では良いはずだが、消費者のニーズでは香りよりも旨味が優先されるため、窒素分の少ない有機のお茶は苦戦している。また見た目においても、お茶をいれた時に鮮やかな緑色でないのは好まれないという話を聞くと、本当に世間一般の有機農産物への関心は低いのだなと考えさせられた。
「気候や環境を生かした有機農業」という言葉が印象に残っている。実際に圃場を見て、まさにその通り実践されているのが分かった。有るものを活かす取り組みは、見習いたい姿勢でもある。
直接お話を伺うことで、有機栽培のお茶を見る目が変わった。ぜひ小﨑さんの緑茶と紅茶を飲んでみたい。緑茶の見た目は鮮やかな緑色でなくても、味わい深い事でしょう。
有機農業をはじめたきっかけ
標高が高いこともあり、もともと農薬はほとんど使わずに栽培ができていた。有機JASにおいてボルドー剤が使用可能ということで、あとは化学肥料さえ使わなければ有機栽培でもいけると考えた。有機栽培に切り替えようとしていた時期は生協との取り引きが多かったため、そのことも影響している。
他方、1990年代に小﨑さんの地域の上流地帯に計画された「ゴルフ場建設」への反対運動も、有機農業へ取り組む動機となっている。ゴルフ場で使われる農薬による水の汚染への危惧から「水と緑を守る会」を結成し反対運動を始めた。その中で自分たちの農法(慣行農法)への反省をせざるを得なくなり、蘇陽町有機農業研究会を結成し、数名の有志で(有)蘇陽有機農産を設立し、有機農業を広める活動をしてきた。
<ほ場環境>
標高600m。圃場は大きく分けると2か所あり、真土の圃場と黒土の圃場がある。
<土づくり>【堆肥について】
堆肥は自家製で、以下の材料を混ぜて数か月(半年未満)寝かせたものを使用している。
材料…もみがら、山草、茶がら、鶏ふん、米ぬか
・草刈り後の刈り草を敷き草にする。・お茶農家では深耕が一般的だが、小﨑さんの農園ではやらない。
<施肥>
購入肥料…魚粉、菜種油粕、鶏ふん(ペレット状)、キーゼライト(苦土肥料・ドイツから輸入)、カニガラ
・春先の葉面散布に液肥を使用する。
・生の肥料は春先には効かないので、春先のみぼかし肥料を使用する。
・微生物資材:バイエム酵素で黒砂糖を発酵させ、黒糖発酵液を作る。黒糖発酵液は一番茶の収穫前に2~3回葉面散布する(4~5反)。
<雑草対策>
畝間(通路)に剪定した枝葉を置くことでマルチングできる。場所によっては手取りや機械による除草も行う(ハンマーモア及び刈払機)。
幼木期の雑草対策は①ライムギによる雑草抑制 ②山野草(干し草)等による敷草で行う。
<病害虫対策>
【病害虫対策】主に以下の3つ。
・品種の選択:栽培してみて、向いている品種が分かってきた。
・窒素成分の最小化:30kg弱/年(慣行の6~7割)となるよう肥培管理する。窒素分が多いと、病害虫が出やすい。
・有機JASで許可された資材の使用:無機銅剤、微生物資材
<鳥獣害対策>
イノシシよけの電気柵を設置している。
<流通・販売>
・農協を通した入札販売:有機のお茶として輸出もされている。
・生協に菅尾茶生産組合として出荷。売り先は主に九州。
・消費者への直接販売。