はじめに
2014年に県内60名の有機農業者をインタビューし、その技や経営を「熊本有機農業リサーチプロジェクト」として冊子やホームページで公開しました。その調査は熊本で初めてのことであり、熊本の有機農業の全体像を表すものとして評価されつつも、新しく有機農業をはじめ る人に伝えるには、技の掘り下げが足りないという宿題を抱えてしまいました。
そこで、翌年2015年に野菜4事例、2016年に稲作4事例(熊本地震の影響で3事例に変更) を調査するという方針をだしたものの、どのように調査するのかの方法が見えず苦しむこととなります。熊本では、有機農業の技は生産者同士の情報交換やほ場見学などを通じて、個々の 生産者の工夫で取り組まれてきた面が強く、研究機関で調査検証されたものを見つけることは できなかったからです。
暗中模索の中でとった方法は以下の4点です。
1) 作物の栽培期間中4回程度現場を訪問し、ほ場を確認しながら生産者から聞き取ること。
2) 生産者に記入して頂いた作業日誌から、作業日数、使用資材、経営などを分析すること。
3) 土壌や堆肥など有機質肥料の分析を行い、土の状態を把握する一助とすること。
4) 米は食味分析もおこなうこと。
調査対象は、野菜では有機農業の特徴である少量多品目栽培の生産者2件(内1件は不耕起 栽培)、単品目大規模栽培の生産者2件としました。稲作では、冬期湛水1件、緑肥ヘアリーベッ チのみで栽培1件、無肥料栽培1件と、それぞれ特徴的な栽培をしながら成果をあげている3 件となりました。
有機農業の技術は、それぞれの地域の環境やほ場条件で違ってくるものなので、今回紹介し た技がそのまま使えることはないかもしれません。ですから、今回の報告書にはその地域の概 要や土壌条件なども入れています。
あとは、この冊子を参考に、自身の作るほ場環境を理解しながら、作物の生育をしっかり観 察することで、生産者自身が技術を高めることに役立てばうれしく思います。
最後に、有機農業の技の成功事例を紹介する事で、有機農業に挑戦しようという人が増える 事を願っています。
2017年1月 (文責:間澄子)