安心・安全にこだわった
農薬不使用茶の栽培
「農薬も使った慣行農法で茶の栽培をしていたが、30 年ほど前に、防除に3日ぐらいかかるのがきつく、体にも悪いと考えていたとき、同じ矢部町の阿部主税さんたちが無農薬で栽培していると聞いて、自分も農薬を使うのをやめて みた。当初はハダニやハマキガが大発生したが、剪定をタイミングよく行うこ とで、大発生を防ぐことができるようになった」と話された。 無農薬で茶を作るには、病気や虫の被害のリスクが高くなり、除草にも大変 な労力を要する。それでも荒木さんが無農薬栽培を行うのには、「安心・安全 なものを消費者に届けたい」という思いからである。JAの無農薬茶部会で情 報交換を行いながら、少しでも、収量を上げていくための勉強や努力に務め、 その結果として、剪定や肥料のタイミングなどの技術を確立されてきている。 現在はお茶は有機栽培、米をエコファーマーで、ハウスピーマンを慣行で栽培されている。
<ほ場環境>
圃場は標高約 450m の中山間地に位置する。 茶園の土質は、火山灰土と赤土の両方あるが、茶にはどちらというと赤土が適しているようである。葉 の形や、芽の出方が土質によって変わる。
<土づくり>
堆肥は投入しないが、除草と土づくりを兼ねて 10a あたり 500kg ぐらいの野草を投入する。大矢野原の 原野の草を圧縮し束ねたものを購入している。
<施肥>
魚粉を中心に3月、9月の2回投入する。
3月:魚粉 100 kg/10a
9月:魚粉 60 kg/10a、油粕 160 kg/10a
肥料の購入は全量JAからである。 量が多すぎたり、タイミングが悪いと虫や病気の発生を招くようである。
<苗>
茶については、最近は植替えを行っていない。そのかわりに、5 ~10 cm ぐらいまでの台刈り(※)を順 番に行う。枝を切ると古い根が死んで、新しい根が発生するようである。
(※台刈り:地際から地上 10 cm くらいのところで切ること。根元近くまで刈り込むと、茶樹には、根 と若干の株元の部分しか残らないので、最低限のエネルギー消費となるため、茶の樹は次の春先まで、 じっくりと養分を蓄えることができ、活力を回復する。)
通常の剪定パターンは
3月:春肥後の整枝、6月:二番茶に向けての整枝、7月:深刈り、11 月:秋整枝。 7月の深刈りが、虫や病気の発生の拡大を防ぐうえで重要である。また、樹高をできるだけ低く保つこ とで、肥料分などが、新芽の発生を促すと考えている。
<雑草対策>
お茶には除草剤は使用せず、刈払機と手取りによる。だから、夏場はずっと除草しているような感じに なる。「百姓にとって雑草は借金と同じ。後からツケを払うことになる」そうだ。
<病害虫対策>
梅雨明けのころ、新芽に炭そ病が発生する。7月の深刈りのタイミングが大事になる。
茶園にもイノシシが草の根などを食べに来て通路を掘ったりするが、茶の根は強いため、それほどダメ ージはうけない。ただ、イノシシが掘った穴に人間が足を取られたりして危ない。今のところは、電柵 などの対策は取っていない。
<販売・流通>
JA の茶部会を通しての販売。「無農薬茶」の表示ができないため、「特別栽培」「農薬不使用」などの表 示を行い、安心、安全へのこだわりをアピールしている。植木市などのイベントに出店してお茶全体の アピールを行っているが、最近、良い(高い)お茶ほど売れなくなっており、安い(良くない)お茶の 方がよく売れるからか、「農薬不使用」などの付加価値をつけたものはなかなか売れない。 お茶の加工においては、色よく仕上げることを心掛けている。