柚子・トウガラシを栽培し、自ら加工

有機栽培した柚子、トウガラシを加工し、有機加工食品として付加価値を付けて販売するという、容易ではないことを実践されていることが印象的だった。最初は有機農業への周辺の理解を得るのに苦労されたとの事だったが、有機栽培を規模拡大し、雇用をすることで地域ぐるみの取組にしたいという考えはすばらしい。経営的に安定しない部分もあるそうだが、地域の核として頑張っていただきたい。

有機農業をはじめたきっかけ

45年くらい前に柚子の産地を県内に作るという目的で、県の専門技術員と専門普及員と一緒に四国の生産地調査と大阪の市場調査をした。当時の農業は、農薬を使っていかにいい物を作るかという時代で、生産地調査では柚子の表面が農薬で真っ白で農薬の使用量の多さを実感した。市場調査では京都の料亭なので皮を主に使うということがわかり、ゆずは特に農薬を使ってはいけないという思いを強くした。同じ頃に、矢部町で有機農業の全国大会が開催され、講師の先生とお話をする中で、柚子こそ有機栽培をすべきものと確信し、栽培をはじめた。
その後、柚子の消費を伸ばすためには柚子の皮を活かした加工品を作る必要があると思い、加工も始めた。有機を始めた頃は一般の農業と逆行したやり方で、変わり者だと思われていたと思う。

<栽培品目>
柚子350a、トウガラシ30a、梅10a、筍100a。
柚子:9月~10月初旬は青いまま収穫し、柚子ごしょう用にする。黄色になったら、柚子ごしょう用、お菓子用、完熟させて果汁取り用として利用
トウガラシは柚子ごしょう用として利用

<ほ場環境>
砂壤土、赤土 標高:350m 中山間地 日当たりは平地に比べて悪いが、日照時間が長いから良い柚子ができるというわけではない。日陰の方が良い柚子ができることもある。

<土づくり>
夏場の草刈した草はそのままゆず園に残し、それを肥料にする草生栽培で、肥料は基本的にやらない。たまに、遺伝子組み換えを使っていない飼料で育てた鶏の発酵鶏糞や、魚とイカの内臓を発酵させた堆肥を使用する。
ゆず、梅には堆肥は使わない。トウガラシにはもみがら堆肥を使っている。一昨年は6t/10a入れ、昨年は入れていない。

<苗>
トウガラシの育苗は、浅箱に多めに播いて鉢上げして行う。2重トンネルで温度を上げて芽立ちを良くする。育苗用土はJAより購入(MKK)。

<雑草対策>
柚子、梅は歩行用除草機と背負式草刈り機を使用している。トウガラシは黒マルチ、手取りで行っている。

<病害虫対策>
イノシシが柚子園、梅園の中の草や山芋を食べるために掘り起こし、穴が空いているので草刈の時に足元が危なくて困っている。また、柚子の木を斜めに押し倒すこともある。
鹿は3~4年生の柚子の若木を丸ごと食べるので、なかなか木が増えずに頭が痛い。今年はネットを張ろうと思っている。
虫害については何もしない。

<流通・販売>
売り先:物産館、百貨店、生協、ホテルなど
売上:2,000万~3,000万円
販路開拓:香港などの海外へ輸出するように取り組んでいるところ。行政が支援してくれるようにはなったが、契約には注意が必要。

こだわっているところ、アピールする点
・農薬を使っていない。
・トウガラシ、柚子を生産し、自ら柚子ごしょうの加工を行っている。
全国でもここまで大規模に柚子、トウガラシを生産し、加工販売しているところはない。